医療従事者の養成課程では、理想的な医療や対人援助技術について学びます。
ヒポクラテスやナイチンゲールの精神を学び、資格を取得し現場に出る頃には、
誰もが患者さんに対し、献身的な姿勢を貫こうと決意します。
「感謝される仕事がしたい」「人の役に立つ仕事がしたい」という思いを叶え、
希望や期待に胸を膨らませ、仕事に就くのです。
ところが現実では、生命と隣り合わせの緊張感と、人・物ともにギリギリの環境のなか、
医療従事者としての理想像を貫き通すことは至難の業となります。
患者さんの声に耳を傾けることは、心通う医療に欠かせない行為ですが、
1人で多くの患者さんに対応しなければならず、全て満足に行うことは困難です。
また、患者さんにとってベストな選択が、病院経営上の問題や設備の問題等で、
却下されてしまうこともあります。
すると、理想と現実の狭間に落ち、
「一体、何が1番大切なの???」という感情がピークに達します。
「でも,私には何もできない…」「私はここに必要のない人間??」
「こんなに一生懸命やってきたのに…」「私はこの仕事に向いていない?」
…この時、心の病はすでに進行しているかもしれません。
むしろ理想は一度忘れて、上司の言うとおりに淡々と仕事をこなす方が無難なのかもしれません。
医療の専門職であるという意識やプライドをもつ前に、病院という1つの組織に入り、
そこには、一般企業とかわらない上下関係としがらみがあることを理解し、
柔軟にならなければ、理想と現実のギャップに悩み苦しみ続けることになるのです。
理想を貫こうと笑顔をたやさず、誰よりもテキパキと働く人ほど、
心病んでいる可能性が高いのかもしれません。
